タンゴリブレ

“この映画に、フランソワ・ダミアンが出ていました。
彼の役はぱっとしない刑務所の看守JC。趣味でタンゴを習っている。そのタンゴ教室で出会ったミステリアスな美女アリスが、なんと彼の勤める刑務所に面会にやってくる。
アリスの面会相手は、夫のフェルナンと愛人のドミニク。この二人は同じ犯罪の共犯者で長期の刑をくらっている。アリスには15歳になる息子もいて、その息子も面会に連れてきます。
自由奔放な彼女に惹かれていくJC。面会時のJCの視線を感じ取った夫のフェルナンがアリスとの関係を疑い、タンゴ教室で出会ったことを聞くと、激しく嫉妬します。
そして、「だったら自分もタンゴをやったらいいじゃない」というアリスの言葉をうけて、刑務所内のアルゼンチン人の受刑者にタンゴを教えてくれと頼みます。
最初は相手にもしなかったアルゼンチン人だったが、実はとんでもないタンゴの名手で、かれがたまたま踊って見せたすばらしいタンゴは刑務所内で大喝采を受け、フェルナンをはじめ受刑者たちはこぞってタンゴを習い始めてしまうんです。
このいかにも男臭いタンゴシーンが見ものです。
どうやら、この官能的なタンゴという踊りは人生を狂わせる力を持っているのかもしれないんです。荒くれ男たちの集まる監獄の世界、アリスと奇妙な三角関係にあるフェルナンとドミニク。謹厳実直な看守JC、そして官能のままに生きているような女アリス、難しい年頃の息子アントニオです。
均衡を保っていたかに見えたアリスと二人の男との関係が、ある時を境に軋み始め、周囲の人々の運命も変えていくんです。何とも巧みなシナリオでした。 ”

ショーシャンクの空に

“いや良かったです。原作も読んでめちゃくちゃ良かったし、映像化されてもそれが裏切られることはなかったです。
何よりみんな上手いです。
1949年かな。主人公アンディー・デュフレーンが収監されるのは。 当時囚人に言うことを聞かせるには簡単に暴力が使われたし、囚人の命なんてあってないようなものだった。
この映画も常に暴力の気配が満ち満ちています。
務所の中に安全なんて一時たりとも約束されていないんです「。
口の利き方ひとつ間違えただけで警棒で打たれます。
腹を蹴られる、顔を殴られる。挙句の果てに囚人の中には務所の奴らにオカマ掘り始める奴まで出てきます。仮釈放も望みがないです。
でも何よりも残酷なのが施設慣れと言って、そんな務所をやがては出たくなくなることです。 何十年と務めて、やがて務所以外への適応力を根こそぎ奪われます。
廃人という言葉が何度も出てきます。
でもこの務所の中でアンディ―だけは生きる希望を絶やさなかった。
無実の罪で投獄されても、その知性と行動力と類いまれなる勇気で、囚人はおろか刑務官らにも一目置かれる存在になっていきます。
何よりも20年に渡るその計画性には脱帽させられます。
彼がけして妻とその愛人を衝動的に殺害する人間でないことがわかります。
彼の計画は間違いなく未来を切り開くために立てられています。
物語が進むにつれ、ショーシャンクがもはや服役する価値のない刑務所であることも判明してくるんです。
そして彼がレッドに残した手紙です。
何度読んでも胸が熱くなります。”

ブッダ・マウンテン

“映画「ブッダ・マウンテン」は、大阪アジアン映画祭での上映作品の一つです。リー・ユー監督でファン・ビンビン主演の作品です。
四川省成都に住む3人の若者ナン・フォン(ファン・ビンビン)ディン・ぼー(チェン・ポーリン)太っちょ(ファン・ロン)と、引退した京劇の役者の女性との物語です。
映画の中で、2008年の四川大地震当時の映像や、現在の被災地のようすが出てきます。
また、地震でひどく壊れてしまった山奥のお寺を立て直すというのが重要なモチーフの一つとなっています。
そして、この映画をみた今日が、19年前に阪神大震災の当日であったことに気づきます。
ファン・ビンビンは、色白で二重まぶたの大きな目、淡い色の瞳、すらりと伸びた手足、退廃的な表情のうまさなど、スター性を持った女優だと思います。
元京劇の役者を演じたシルビア・チャンもベテランの女優です。
男優陣は、台湾の人気俳優チェン・ポーリンと、中国のフェイ・ロンです。
フェイ・ロンは、体重100kgくらいありそうな「太っちょ」なのですが、走る、踊る、その身体能力は体型から考えられないくらいです。
映画は、これも観客に考えさせる終わり方で、余韻が残ります。 ”

ドラッグ・ウォー 毒戦

“監督は香港映画で今、もっとも人気があるといってもいいジョニー・トーです。
今回は初めての中国での撮影で香港・中国合作。主演も香港のルイス・クーと中国のスン・ホンレイがそれぞれドラッグ売人と公安警察の警部として互角に火花を散らす。
中国。覚醒剤製造工場が事故で爆発し、テンミン(ルイス・クー)は車で逃げる途中、事故を起こし、警察に捕まる。麻薬製造は死罪の中国です。減刑を条件に情報提供とおとり捜査に加わることをジャン警部(スン・ホンレイ)に申し出る。覚醒剤の売り手、買い手の双方を騙して一網打尽を狙う警察です。
このジャン警部が表情も変えずにつぎつぎと新しい手を打って、犯罪組織をたたきつぶしていこうとするところ、こんな超人警察官あり得ないよ、と思いつつも、その渋さにホレます。対するテンミンも、犯罪者なのに誠実そうに見える行動もあって、実はいい人なんじゃない?と思わせるところもあるけれど、実に実にしたたかです。
とにかく、テンポが速く、息もつかせぬ展開、まさかと想定を裏切られること度々で、怒濤のラストになだれこみます。
最近の「中国一の覚醒剤村」一斉摘発 村トップら182人拘束」なんていう報道も思い出され、この映画に描かれていたようなことも実際にありそうな気がしてしまうんです。
後から知ってびっくりしたのは、この渋い警部役のスン・ホンレイって、「初恋のきた道」でチャン・ツィイーの初恋の相手の青年役だったってことです。”